ホーム > 特集ページ > プレゼンティズム・アブセンティズムとは。すぐにできる残業時間を減らすための具体策3選。
2020年4月から中小企業にも導入された時間外労働の上限規制。
厚生労働省の専門サイトでは違反した場合、6 か月以下の懲役または30 万円以下の罰金が科される恐れがあると記載されています。
この記事では中小企業の経営者や人事労務担当者が知っておくべき、時間外労働規制の全容。
また近年大企業の人事部が、残業時間短縮のため、仕事のパフォーマンスを向上させるために取り入れている、「プレゼンティズム」、「アブセンティズム」について分かりやすく解説していきます。
このタイミングで残業を減らすだけでなく、仕事のパフォーマンスを上げ、職場の活性化を目指していきましょう。
昨今の働き方改革の一環として、改正された労働基準法。この改正により大企業では2019 年4 月から。中小企業でも2020 年4 月から時間外労働の上限が法律に規定されました。
出典:厚生労働省ホームページ
https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/overtime.html
改正前は、法律上残業時間の上限は無く行政指導のみでした。
法改正後は、法律として上限があり違反すると罰則が科されるようになりました。
時間外労働の上限ができたから、「決まった時間しかPCの電源を入れられない。」「時間になったら強制的に会社の電気が切れる。」といった対策を取っている企業もあります。そのような外的な対策もアリですが、そもそも業務の内面に無駄がないかを見直すことが根源対策になります。
ここでは業務に無駄がないか、自社の現状をチェックリストを使用してチェックしていきましょう。
10個の中で5つ以上チェックが付いた場合、まずは工程を減らす。不要な物を捨てるなど、削減する取り組みを社内で時間を使って取り組んでください。
実は業務の無駄による残業かも?
10のムダセルフチェック
ムダチェック
01
社内のコミュニケーションが悪く、全員に情報が行き届いていない。
ムダチェック
02
作業が標準化されていないため、同じ作業が人により違う方法で行われている。
ムダチェック
03
過去の慣習でしているが、実際は不要な仕事をしている。
資料を作成する時間と、資料の有用性は釣り合っていますか?
ムダチェック
04
同じ集計作業を違う人もしている。
ムダチェック
05
同じ内容を何度も違う紙やパソコンに転記している。
始めからパソコンに入力すれば1度で済みませんか?
ムダチェック
06
チェックに自分、同僚、上司その他さらに他の人がチェックする業務がある。
ムダチェック
07
整頓されていないため、物や情報を探している時間が今週あった。
ムダチェック
08
PCやスマホを使える業務にも関わらず、紙で伝達している。
ムダチェック
09
レイアウトが悪く移動距離が長い。または物を取るときに無理な態勢になる。
ムダチェック
10
不要なものが敷地の隅に置かれている。
意思決定をせず後回しにすることが多い社内文化になっていませんか?
チェック項目が4個以下の企業の場合、社内の業務改善と合わせて、大企業で今話題の健康経営を取り入れ、残業時間の削減を考えていかれてはどうでしょうか。
社員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する 健康経営。経済産業省と東京証券取引所が共同で優れた健康経営を実践している企業を、東京証券取引所の上場企業33業種から選定し健康経営銘柄として2015年より選定しています。
この大企業を中心に取り入れられる健康経営。健康経営を学ぶ上で必ず覚えておきたいキーワード、プレゼンティズムとアブセンティズムをここでは見ていきましょう。
出勤しているにも関わらず、心身の健康上の問題により十分なパフォーマンスが発揮できない状態。
病気やケガしながら出勤している状態と言われています。病気といっても、花粉症などのアレルギーから、職場の人間関係によるメンタル不調や、睡眠不足による眠気。職場特有の動きにより起こる肩こりや腰痛、関節痛など幅広く、業務の生産性を低下させている状況のことを指します。
参考までに花粉症の人は花粉の時期には作業効率が5%低下するなどの研究がされています。
遅刻や早退、欠勤。またメンタル不調による長期間の休職など、職場に来れない、または業務につけない状態。
病気やケガで欠勤している状態と言われています。
アブセンティズムは、欠勤日数など数字に現れるため注目されてきましたが、現在ではプレゼンティズムの方が会社に与える労働損失が大きいと言われ、プレゼンティズムの研究が多くされています。
労働生産性が下がる=1時間あたりにできる仕事量が下がると置き換えることができます。
具体例で見てみましょう。
1日8時間で100の仕事をしたいAさん。1時間12.5の仕事量をこなしていた人がいたとします。Aさんは繫忙期のため、残業が多く1日の睡眠時間が5時間しか取れず、睡眠不足のため10%生産性が下がっていました。この場合、Aさんが1時間でできる仕事量は11.25となり、8時間かけても90の仕事しかできない状態となっていました。
残った10の仕事の納期が今日であったため、この10の仕事をするため約1時間の残業が発生。
健康面が優れず生産性が下がり、残業が発生。またこの残業により心身の不調が発生しさらに生産性が低下。
悪循環となりさらに残業が増え、企業にとっても残業代金が増加。またこのAさんの仕事が多そうに見えるため新たな人材の採用など、プレゼンティズム、アブセンティズムによる企業への損失コストは間接費用の最大のコストだという研究も多数されています。
そもそも今回の労働基準法が改正された理由も、日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少への対応」。長時間労働が健康の確保を困難にし、仕事と家庭の両立を困難にし少子化の原因となっている。ためと厚生労働省は発表しています。
残業時間を減らすことは、健康な状態を長く維持すること。また家庭も円満になり、少子化を抑制することに繋がり、私たち社会にとっていい事尽くめだと考えられます。
このパートでは、中小企業でもすぐに取り入れられる、心身の不調を防いで残業時間を減らす具体策3つを紹介します。
転職サイトリクナビNEXTによる、転職理由と退職理由の本音ランキング(左図)では10位までに人間関係に関する不満が3つも入っています。人間関係が悪い多くの原因はコミュニケーション不足。
「相談すべきタイミングでしなかったことによるすれ違い。」なんて経験は社会人であれば一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
そんなコミュニケーション不足を防ぐ具体策は、社内イベントの導入です。
・朝礼や終礼を取り入れる
・半日を対外的な休暇にし、全社員で食事をする
・有志のサークル活動を企業で認め、一人当たり数千円の補助を出す
など
1位 | 上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった(23%) |
---|---|
2位 | 労働時間・環境が不満だった(14%) |
3位 | 同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった(13%) |
4位 | 給与が低かった(12%) |
5位 | 仕事内容が面白くなかった(9%) |
6位 | 社長がワンマンだった(7%) |
7位 | 社風が合わなかった(6%) |
7位 | 会社の経営方針・経営状況が変化した(6%) |
7位 | キャリアアップしたかった(6%) |
10位 | 昇進・評価が不満だった(4%) |
出典:転職サイトリクナビNEXT
https://next.rikunabi.com/tenshokuknowhow/archives/4982/
コラム
アメリカでは、トランザクティブメモリ「誰が何を知っているのか」を知っていることが仕事のパフォーマンスを向上させる。という考えから、グーグルのオフィスでは色々な「遊び」の施設があり、同僚や他部門の人と交流する場が用意されています。
今では健康増進法のため、日本のオフィスでは減ってしまった喫煙場所が従来は社内コミュニケーションを図る場所としての役割をしていた。という考えもあるようです。
健康のため仕方ありませんが、喫煙所や仕事終わりの上司との飲み会など、時代の変化とともに無くなったコミュニケーションの場を、企業は新たに作っていく必要があります。
心身の不調により、会社には来ているけど仕事の生産性が下がるプレゼンティズム。
この心身の不調を防ぐため、仕事の一環として社員向きの健康プログラムを導入する方法があります。
特にコロナウィルスの影響でジムに行けないなど、運動ができない方向けのオンラインで行える社内フィットネスの注目が高まっています。
心身の不調により、会社には来ているけど仕事の生産性が下がるプレゼンティズム。
この心身の不調を防ぐため、仕事の一環として社員向きの健康プログラムを導入する方法があります。
特にコロナウィルスの影響でジムに行けないなど、運動ができない方向けのオンラインで行える社内フィットネスの注目が高まっています。
社内フィットネス導入時の注意点
休み時間にするのではなく、あくまで仕事の一環として取りれてください。
休憩時間に強制すると、やらされている感が高まり、効果が得にくくなります。
研修と同じように、業務時間内に健康のために取り入れることが導入のポイントです。
社内フィットネスサービスの料金
会社の規模にもよりますがおおよそ下記の料金が相場です。
1~100名 40,000円/月~
プログラムの流れはサービスを受ける企業により違いますが、おおよそ下記のとおりです。
仕事の中でも、他の仕事に影響を与えるような疲れの原因となる肉体労働には、働く人のためのサポーター「ワーキングサポーター」の活用をオススメします。
例えば上記画像のような、重量物をはこぶ人のためのサポーターがワーキングサポーターです。社員の方の肩が汚れていたら、きっとその仕事に負荷がかかっているはずです。このようにいつも作業着のある部分が汚れている。いつもある体の箇所を痛めてるなど。一度社員の方にどの仕事が大変かヒアリングし、適切な道具を提供するのも働き方改革、残業時間の短縮につながります。
最後に、この記事で紹介した中小企業のための残業時間削減のための3つの具体策をまとめておきます。
①社内コミュニケーションの強化で、仕事のムダを省く
②社内フィットネスの導入で、社員の健康状態を上げ業務効率を上げる
③疲労の蓄積を防止する、ワーキングサポーターを活用する
これら3つの方法のどれか1つだけをやればいいという訳でなく、3つの方法を自社の現状に合わせて取り入れてください。
日本の企業は99.7%が中小企業と言われています。働き方改革を進めるのは大企業ではなく、むしろより多くの人が働く中小企業ではないでしょうか。
中小企業で働く人が、健康で家庭が円満だからこそ少子化に歯止めができる。簡単に取り入れられる方法で、長時間労働を解消しましょう。
免責事項
・開示資料及び内容は、執筆時点での情報となります。
・主観的な評価情報、時間の経過による変化、伝聞情報が含まれることから、その完全性、正確性を保証するものではありません。
・上記理由より、解釈については常に最新の情報を参照され、必ず原文等で御社にてご確認ください。