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vol.
4

「NINJAが子供を救う?これが令和の忍者でござる」

2023年に販売を開始した生分解性マルチシート「NINJAマルチ」。
農業用噴霧ノズルメーカーが、生分解マルチシートを開発した経緯とは!
そこには生分解マルチへの開発者たちの並々ならぬ思いとこだわりが!
なぜ始めた、こども食堂プロジェクト?
その全貌を、開発担当者の「黒忍者」が「イセエビ」と一緒に紹介します。

インタビュー

イセエビ:黒忍者さん、まるで忍者のように姿を消す「NINJAマルチ」、好評みたいですね。

黒忍者:そうでござるよ。2023年に販売を開始した、拙者が登場するNINJAマルチは10mのパッケージ版、200m版ともに順調に販売数を増やして、2024年にはシルバータイプも登場したぞ。

バーコードリーダー

子どもにも大人にも嬉しいNINJAマルチ

イセエビ:(語尾がござる…。)噴口メーカーのオーミヤが生分解マルチを開発したと聞きましたが。

黒忍者:はじめのきっかけは江戸(現在の東京)であった農業の展示会でござるよ。生分解フィルムの製造ノウハウを持っていた人が当社ブースに来てくれて、商品化していこうという話になったことがきっかけじゃ。

町並みイメージ

江戸の街並み(江戸=現在の東京)

イセエビ:(江戸…。切り替えよ。)
江戸での出会いだったんですね!

黒忍者:そうでござる。生分解マルチはすでに30年以上も前に国内で販売が開始、けれども現在の普及率は10%以下と伸び悩んでおってのォ。
どうしてそんなに普及が進んでいないかを調査すると、「とにかく価格が高い!」「通常のポリマルチに比べて単価が4-5倍!」「そんな高い資材使えないぞ!」と農家さんの声があがっているんじゃ。

イセエビ:私が生まれる前から生分解マルチはあったんですね。
農家さんの声を聞くと、導入するにはハードルが高そうな商品ですね。伸び悩むわけだ。

生分解マルチの課題

黒忍者:どうして生分解マルチシートが普及しづらいかを話す前に、生分解マルチについて説明するぞ。
生分解マルチシートは、PBATとポリ乳酸(PLA)という2種類のバイオプラスチックに、成分を調整するフィラーと呼ばれる添加物を含ませておる。理由は耐候性などを向上させるためじゃ。この組み合わせが基本的な構造で、どこのメーカーでもコレが基本でござる。
そして、従来品のマルチシートの原料、ポリエチレン(PE)に比べると、これらのバイオプラスチックが高価格であることが、普及の進まない大きな要因となっておる。
しかし、これだけが原因ではなくてのォ。他に商流と品質がポイントになっておる。

PBATとPLAの特徴

PBATとPLAの特徴

イセエビ:高いだけではないんですね。商流?と品質かぁ。買い方も影響があるんですね。

黒忍者:そうじゃ。
農家さんに対しての農業資材の販売方法は、従来と同じ、メーカー→商社→小売店→農家という形の商流になっておる。どうしても、拙者たちメーカー側から農家さんへ届けるまでにコストがかかってしまう形になっておるんじゃ。

農業資材の商流

黒忍者:生分解マルチシートでは拙者たちは後発だったんじゃ。じゃから、中間の商流を省き直接農家さんに使用してもらうアプローチを行ったんじゃよ。おかげで、中間で発生するコストを削減できたでござる。

イセエビ:後発という立場だったからこそできた方法ですね。

黒忍者:そうじゃのォ。次は品質じゃな。
通常のマルチシートはスーパーのビニール袋と同じ頑丈なポリエチレン(PE)製じゃから、破れないことが前提条件となっておる。シートが破れると、そこから雑草が生えてきてマルチの意味をなさないからのォ。このことから、バイオプラスチック製にも同等の頑丈さが求められておる。PE製と同等性能を確保するために、通常の生分解マルチシートはシートの厚みを0.02mmにしている商品が多いんじゃ。
しかし、拙者たちが検討した結果、たどり着いた答えは「生分解するシートを頑丈に作らないこと」だったんじゃ。
野菜の収穫は苗を植えてから長くて約4か月となっておる。その期間だけシートが破れず、形を保っておればよいと想定したんじゃ。その結果、拙者たちの生分解マルチシートの厚みは、従来品の70%、0.014mm厚にしたでござる。

マルチシートの厚み仕様

厚さ0.014mmでも破れないNINJAマルチ

イセエビ:シートが30%薄くなったことで、コストも30%カットできたんですね。

黒忍者:そうじゃ。開発の途中では、50%薄くした0.01mm厚や40%薄くした0.012mm厚というモデルも検討したが、これらは少し薄くて4か月の期間やマルチャーで展張する時に課題があったでござる。

イセエビ:薄さの検討も色々したんですね。目視では厚みの確認ができなさそうです。

黒忍者:そうじゃのぉ。見た目では判断できない薄さじゃが、極端に薄すぎると問題なく収穫できる野菜に限られるでござるね。もちろん、希望があれば0.01mmや0.012mm厚みの製造も可能でござるよ。

農家さんとの話

イセエビ:黒忍者さんは直接農家さんとお会いすることで別の気づきもあったそうですね。

黒忍者:そうでござる。噴口の提供時は、メーカーとして商品を作って売り出して終わり。農家さんの本当に欲しいものや困りごとを細かく聞いて、商品に反映してこなかったでござる。

イセエビ:農家さんに寄り添えていなかったということでしょうか。

黒忍者:そうじゃのォ。噴口は農業機材の一種になるんじゃが、商流はやはり商社→小売店と流通が通っておるから、メーカーと農家さんの距離が遠いでござる。毎年4月からの繁忙期になると、いつも通り商品が売れていくので、改善をしようと考えなかったことがメーカーとしての課題だったんじゃ。NINJAマルチを販売するようになって、ようやく直接農家さんから話を聞くと、「噴口なんて20年前から新商品出てないでしょ」って言われたでござるよ。

鹿児島ヤマダイ様

噴口なんて20年前から新商品出てないでしょ 鹿児島ヤマダイ様

黒忍者:その経緯があって、NINJAマルチは農家さんの意見をしっかり反映させた商品にしていこうと考えたでござる。今度こそ、直接販売するメリットを活かすんじゃ!

イセエビ:現場の声を商品に反映する。今までできていなかった部分をこの商品ではしっかりと取り組んでいくのですね。いい取り組みになっていきそうだと思います。

農家さんへの還元

黒忍者:ただ、今までと同じように一方的に商品を売っていては農家さんも心を開いてくれないじゃろぅ。より関係性を深くするには相互の関係が必要だと、拙者たちは考えた。そこで、農家さんの作っている作物、特に市場で価格が付きにくいB品の野菜を、拙者たちで買い取ることを考えたんじゃ。

B品の野菜イメージ

B品の野菜は市場では流通されず廃棄される

黒忍者:その野菜を拙者たちの村(社内)の人に食べてもらおうと考えたんじゃが、村の人だけですべての野菜を消化するのは難しかったでござる。そこで考えたのが、地域のこども食堂への食材提供でござる。

イセエビ:こども食堂、なんとなく聞いたことがありますが、どういう取り組みかは詳しく知らないですね。

黒忍者:なるほどのォ。では、こども食堂の説明をするでござる。
こども食堂とは、貧困家庭や孤食の子どもに対して、地域住民のボランティアや自治体が主体となり、子どもが一人で利用できる、無料、または安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供する場のことじゃぞ。こども食堂毎に、利用する子供の数や開催頻度に違いがあるのォ。
例えば、規模は子供の人数が10人程度から100人まで、開催頻度は週に1回から月に1回でござる。月に1度で開催するところでは100人と大規模に、週に1~数回程度などのところでは数十人と小規模に行われることが多いでござる。

イセエビ:こども食堂に来た子供たちは具体的に何をしてもらえるんですか。

黒忍者:食堂と書いてあるだけあって、基本的には夕方から晩の間に開催してごはんを提供してもらえるんじゃ。学校終わりに違う学校、違う年齢の子供たちが集まるので、いろんな交流できる場所になっておるぞ。

イセエビ:ごはんが食べられるだけじゃなくて、いろんな子と交流もできるんですね。

黒忍者:そうでござる。ごはんは、無償提供のところもあれば、一回100-200円で提供しているところもあるでござる。子どもたちに低価格で提供できるように、食材費などかかる費用はすべてこども食堂の運営さんが担ってくれているんじゃ。そのため、拙者たちのような企業からの募金や食材を提供する組織が存在しているのでござる。

こども食堂と当社の関わり

イセエビ:そんな取り組みがあるんですね。当社はどんな形で取り組んでいるんですか。

黒忍者:気になってきたかのォ。じゃあ、ここで実際に2024年から我々が食材提供をしている、東大阪の「こども食堂かのう」を紹介するでござるよ。
ニン!ニン!

こども食堂かのう

月に1度こども食堂を開催している、こども食堂かのうの入口

イセエビ:大きな建物ですね。

黒忍者:そうじゃのぉ、街の自治会館を利用して開催しているようじゃ。こども食堂かのうは、生協加納診療所さんが中心となり、月に1回開催されているこども食堂でござるよ。大体毎回200人程度の小学生やその家族が来られるようじゃ。じゃあ、実際に提供しているものを見てみるでござる。

自動ラック

この日の食事は焼きそばとほうれん草の和え物・焼き芋・ポテトサラダでした。

イセエビ:わぁ!おいしそうなごはんですね。それに、体にも嬉しいメニューになっていますね。

黒忍者:うむ。この食事はすべて、運営に携わっている蒸野さんの食堂で作られているでござるよ。

インタビュー

蒸野さんと当社の道野社長

蒸野さんとの2ショット

イセエビ:蒸野(むしの)さん、こんにちは。こども食堂は何年ぐらいされていますか。

蒸野さん:こんにちは。
こども食堂はコロナが流行する前から始めていて、8年ぐらいやっています。

イセエビ:8年!コロナ時期の前から始めているんですね。
こども食堂はどのように始められたのでしょうか。

蒸野さん:地域の方からこども食堂を始めたいとの声があがりスタートしました。
当初は長屋の方で開催してたんですけどねスペースが狭くてね。毎月200人程、人が集まるため、こちらの自治会長さんに相談して今のこの場所で開催してます。

イセエビ:そうだったんですね。こども食堂をする上で大変なことや嬉しいことは何でしょうか。

蒸野さん:大変なことは、食事提供のためのやりくりです。食材の価格高騰をうけて、もともと限りのある予算の中からメニューのやりくりをしないといけないので。
野菜や食材の提供は助かります。運営はお金のこともあり大変ですが、子どもたちが食べ終わった後に「ごはん美味しかった」と声をかけてくれることがとても嬉しくて、元気をもらっています。

イセエビ:お話ありがとうございます。

当社のこども食堂への提供品について

黒忍者:当社では、こども食堂かのうさんに、鹿児島県指宿市で六次加工をしているカマタ農園さんのおやつさつまいも、ポテトサラダ、パックご飯などを提供させていただいているでござるよ。

すべて無添加で子供から大人まで安心して食べられます。

すべて無添加で子供から大人まで安心して食べられます。

イセエビ:不揃いの野菜ではなく、調理加工がされた食材も提供しているんですね。

黒忍者:そうじゃ。不揃いの野菜の提供も今後行っていく予定でござる。今回提供している食材は、カマタ農園さんが取り組まれている活動で生産しているものじゃ。この取組についてはまた別のジャーナルで紹介したいと考えておるぞぉ。簡単に説明すると、市場流通にできない形の不揃いな野菜を加工して、美味しい食材として提供しているんじゃ。味にはまったく問題がない鹿児島県産野菜に手を加えることで、食材の無駄を防ぐことができているでござる。

イセエビ:かまた農園さんの取組に共感されたんですね。もったいないという気持ちを汲み取る、良い取り組みですね。

黒忍者:拙者たちの生分解マルチシートを使うことでプラごみが減り、農家さんの作業負担が減っていく。当社の生分解マルチシートを使用してくれている農家さんが育てた野菜のロス部分を当社が買い取って、それを地域のこども食堂などの食材に困っている人たちに提供する。当社→使用者→提供先による、この循環が誰かの助けになり、そしてこのような取組が広まっていったらいいなと考えているでござるよ。

編集後記

編集後記

今回のスタッフジャーナルはいかがでしたか?
コスト面やシート企画開発などNINJAマルチの裏側、農家さんとの出会いによる商品へ姿勢、こども食堂の取り組みスタートなど、いろんなことをご紹介しました。少しでも楽しめる内容になっていれば、開発担当者として嬉しい限りです。さて、そんなNINJAマルチは、従来品のポリマルチと比べて大体2倍程度の価格。お求めやすい価格にもなっています。(宣伝です笑)
詳細は下記リンク先を参照ください。
https://www.ohmiya.co.jp/product_db/ms-64bk200/
当社だけの取組だけでなく、農家さんとこども食堂など、それぞれ別の課題を抱えている団体同士の間に私たちのような法人が入ることで、みんなが嬉しいサービスが生まれる。こういうことが日本全体で広まっていったらいいなと感じる次第です。スタッフジャーナルでは、今後も引き続き、皆様のお役に立てるような新製品・その他情報などを発信していきますので楽しみにして頂ければと思います。

黒忍者

この記事を書いたのは
黒忍者

NINJAマルチ開発担当者の「黒忍者さん」
最近農園を借りて、NINJAマルチシートを使用した家庭菜園を始めました!