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vol.
01

金属加工屋 真夏の大冒険「樹脂継手造りました」

2018年に業界として初の樹脂製フレキニップルを販売したオーミヤ。
オーミヤは、東大阪にあるばりばりの金属加工屋にも関わらず、なぜ、樹脂製継手を開発したのか。
そこには、開発者の知られざるこだわりがありました。
スタッフジャーナル第一弾
「EXフレキニップル」開発の裏側について開発担当の「工場長」にインタビューしました。

インタビュアーゲンと工場長

工場長とゲンは自他ともに認める仲良しコンビ

インタビュー

ゲン:「EXフレキニップル」をリリースしてから早いもので三年が経ちますね。
通算で15,000個以上の販売数となってますが、この販売数について工場長はどう思われますか?

工場長:あ、そうなんや…気づけばもう三年も経っているんやね。正直なところ…「0」が一個少ないなと・・・
水回り業界って使ったことがないものを極端に嫌う傾向あるやん。
だから、世間に認知されるまでは1年位の時間はかかるかなと。ただ、認知されて「使い勝手」と「価格が安いこと」を感じてもらえれば、後は流れるように売れていくと思ってたんやけど。

驚くゲン

まさかの桁違いに驚くゲン

ゲン:「0」が一個少ない…それは販売する側としては耳が痛いです(笑)

当社は東大阪市のバリバリの金属加工屋だと思うんです。
金属製のフレキニップルなんて、今から50年も前から販売しているロングセラー商品じゃないですか。 どうして金属加工屋が樹脂の継手を作ろうと思われたんですか?

工場長:ほんまやね。
まあそもそも、水道業界は、他業界と比べると素材の変更に遅れているなとずっと感じてたんよ。
元々この業界って鉛管、銅管、鋼管から始まったから、金属製ねじ込み継手がほとんどやったでしょ。
最近でこそ、架橋ポリエチレン管とかの樹脂管が多くなってきて、樹脂製のワンタッチ継手もかなり認知されてきてるけど。
そういった背景から、金属製のねじ込み継手だけじゃなくて、樹脂製継手もチャレンジしてみようと思い立ったんよね。

金属製のフレキニップルを持った工場長

当然ながら、金属継手への愛情も深い工場長

樹脂製継手にチャレンジ

ゲン:そうなんですね。確かに、10年ほど前と比べると、金属製ねじ込み継手の販売量もずいぶんと減り、樹脂化が進んでいますもんね。そう考えると金属加工屋ということにこだわわらず、継手屋として材質変更を柔軟に考えていくのはありですね。

気になっていたんですが…そもそも「EX(エクストラ)フレキニップル」のエクストラってあまり聞き慣れない言葉ですよね?(洋服のブランドでゴリラのマークのエクストララージくらいでしか聞いたことないんですけど)

洋服のブランドでゴリラのマークのエクストララージ

ゲンの頭の中(ロゴは、エクストララージ オフィシャルサイトより引用)

工場長:えっ、そんなん今まで知らんで売ってたん?
エクストラは、ラテン語で「特上」、「特別」という意味で、ねじ精度にめちゃくちゃこだわった「特別なフレキニップル」→「エクストラなフレキニップル」→Exフレキニップルになってんで

ゲン:へえ~そうだったんですか!
まさに、工場長のこだわりなのか、クセなのか、思い入れがいっぱい詰まったエクストラな商品なんですね!
エクセレントですね!

工場長:なんやねん(笑)
完全にいじっとるやないか!

ゲンさんと工場長の様子

調子にのったゲンを突っ込む工場長

ゲン:失礼しました!
本筋に戻るんですが、この商品を開発した経緯について教えてもらえますか?

Exフレキニップル開発の経緯

工場長:金属加工屋が言うのもなんなんやねんけど、従来の金属製フレキニップルって製造、結構手間なんよ
切削加工した後にメッキすんねんけど、素材から製品になるまで、結構な人の手が必要やねん。
その割に、ホームセンターで、「なんやねん!この価格」っていう、激安の殿堂みたいな価格で流通してて、そもそも金属でこの商品作る必要ある?ってなったわけ。
で、しばらく考えて もういい、樹脂化したろと。
そしたら、工数は減るわ、最後のメッキ処理もいらんくなるわ。従来の金属みたいに価格が変動せんくて、安定してるし、もういいことしかなかったね。

ゲン:確かに、金属のフレキニップルは1個=70円とか、とにかく安いイメージがあって、営業の現場でも価格だけの話になることが多々あるんですよ。でも、本当にこの商品70円で販売できるの?っていうのは以前からあったんですよね。

金属のフレキニップル販売価格

ホームセンターで売られる金属製フレキニップル

こだわりぬいた開発エピソード

ゲン:そういえば、この商品、開発した時は、結構苦労されたと聞きました。
どんなところで苦戦したんですか?

工場長:うん、そうやね。
中でも・・・1番時間かかって大変やったんは性能評価やね。

性能評価

試験資料は数十ページにもおよびます

ゲン:そうなんですね。
性能評価ってどんなことされたんですか?

工場長:例として挙げると 耐候性試験、ウォーターハンマー試験、ヒートサイクル試験。
試験→失敗の繰り返しやったよ。
当たり前やけど、水道の継手やから水漏れは絶対にあかんでしょ。安心して使えるもんじゃないと販売なんかできへんねんから、開発期間中は来る日も来る日も試験を繰り返しててんで。

ゲン:へー。
今まで水が漏れなくて当たりまえに売ってたんですけど、そんなに何度も試験されてたんですね。

工場長:後、ネジ精度もかなりこだわってんで。

ゲン:ネジ精度ですか?

こだわりのネジ精度

ペットボトルのねじと見比べれば一目瞭然。本気のねじ加工。

工場長:樹脂製品のネジ精度って結構いい加減やん。
でも、EXフレキニップルは、普段製造している金属製継手の基準に合わして作ったんよ。
だから、製品ページには書いていないけど、樹脂金型の業者に数十回の作り直しを要求して、最後の方は、金型屋さんが「樹脂にここまでの精度求めませんよ・・普通は」って言われたわ。

でもその結果、金属継手とそん色ない、ねじ精度に達した事に、満足してるよ。

ゲン:そこまで金型屋さんに言わせて、妥協せずに求めた結果、今の製品があるんですね。
ちなみに、EXフレキニップルをリリースした時はどんな気持ちでした?

工場長:気持ちいうか、まず開発担当者からするとリリースして終わりじゃなくって、色々試行錯誤して完成した製品が市場に出てどのような評価をされるのかを聞くまでは安心できへんよね。
ただ現状、販売後にリピートをしていただいてるとお客様がいたり、取扱店が増えてるっていうのは、開発担当者の冥利に尽きるね。

ゲン:なるほど。リリースして安心。ではなくて評価されてリピートされるまでなんですね。

Exフレキニップルリリース

店頭でのExフレキニップルの様子

安心してご使用いただくために

ゲン:開発のエピソードはいろいろ伺ったんですが製品の特長もあらためて教えていただけますか?

工場長:まず、一番の特徴はスパナを掛ける六角部の構造かな。
一般的にねじ込み継手には、「適正締付けトルク」っていうのがあんねんけど、実際の現場では職人さんが水が漏れないようにって力任せにねじ込む事が多くあってね。
金属なら力任せでも折れることないねんけど、樹脂の場合折れてまう可能性あるから、継手が折れる前に、スパナを掛ける六角部が壊れることで、絶対に折れへん設計にしてんねん。

スパナをかける六角ネジ

絶対に壊れない六角部

ゲン:確かに職人さんが一番心配なのは、漏水とよく聞きます。
歴の短い職人さんだと、シールテープを何重にも巻いたり、これ以上しまらないというところまで強くしめる。という、少し誤った施工をされる方もいらっしゃったり。
そういった事も考慮されて設計されたわけですね。

工場長:安心を保証するために第三者機関の日水協も取得してんねんで

ゲン:あのトイレとかについてるJWWAのやつですね。

工場長:何回も検証と設計した商品やから、水漏れせえへんのは間違いないねんけど、メーカーが「大丈夫ですよ」って言うより、職人さんはやっぱり水協マーク好きでしょ。

ゲン:営業してるときに「樹脂製やけど大丈夫?」という声を実際にいただくんですよね。改めて聞かせていただいて今度からは「日水協品なので樹脂でも大丈夫です。あと、詳しいことはこのジャーナルを読んでください」と自信もって案内できます。

工場長:ちゃんと説明してや。あと、商品の中にはいってる「禁止・注意事項」を、施工前に必ず読んでもらってね。シールテープは、ここに書いてあるように先端から2から3山あけて3周半から5周、太巻きはあかんで。

ゲン:禁止事項のここの説明のことですね。よくわかりました。

説明する工場長

禁止事項は当社配布のチラシの裏面に記載があります

工場長:とにかく、この商品を実際に使ってもらって安さやったり、品質の良さを感じてもらって、今後フレキニップル=樹脂が当たり前になればいいなあって思ってます。

編集後記

編集後記

ここに書ききれないほどの特徴を細かに教えてくれた工場長。ほんとにこの商品に対して愛着と、自信があるんだなと感じました。
ただ編集している中で、こんなに大阪弁を文字に書き起こすことがないので、はたしてこの方言伝わるのか?という不安が、、、、
ただ工場長のありのままの言葉で伝えた方が思いが伝わると考え、方言の編集も最低限にしました。個人的には、工場長が最後に言った「より多くの人使っていただきたい」が、一番営業として、心にズシリと響きました。

ゲンさん

この記事を書いたのは
ゲン

スキンヘッドがトレードマークのスーパーセールス。
スキンヘッドの見た目とうらはらに、社内でいちばん優しい2児の父。