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安全靴と作業靴~JIS規格とJSAA規格。安全な作業をするために~

安全靴と作業靴~JIS規格とJSAA規格。安全な作業をするために~

工場や現場で働くと必ず目にする「安全靴」。
一般的な人には聞き馴染みのない靴ですが、危険を伴う場所で働く人にとっては無くてはならない存在です。しかし実際に安全靴を履いている人の中には、何故履くのか、どんな決まりがあるのかを知っている人は少ないのではないでしょうか。この記事では、安全靴とは何か?何故履かなければならないのか?安全靴の規格などについてまとめていきます。この記事を読むことによって、何故安全靴を履かなければならないのかを理解し、履くべき安全靴について知るきっかけになればと思います。

目次

  1. 1.安全靴とは
  2. 2.なぜ安全靴の着用が必要なのか
  3. 3.JIS規格と安全靴
  4. 4.JSAA規格と作業靴
  5. 5.JIS規格とJSAA規格
  6. 6.まとめ

1.安全靴とは

安全靴とは

安全靴とは、日本工業規格(JIS規格)において「主として着用者のつま先を先芯によって防護し、滑り止めを備える靴」と定義されています。工事現場や重機、重量のある部品を取り扱う工場内外や、鉱業、建設業などの足への危険を伴う作業場で使用する着用者の足を保護することが目的です。JIS規格に合格した靴を「安全靴」と呼び、主につま先の保護を備えた「JIST8101安全靴」と静電気帯電防止性能を備えた「JIST8103静電気帯電防止靴」があります。試験に合格した安全靴には「JISマーク」が表示されています。

JISマーク

JISマーク

JIS規格の安全靴以外にも公的な試験に合格し、つま先の安全性能を持つ、JSAAの規格認定を受けた靴を「プロテクティブスニーカー」、通称「プロスニーカー」があります。プロスニーカーには、型式認定タグが付けられます。

左:JSAA認定マーク 右:認証タグ

左:JSAA認定マーク、右:認証タグ

つま先に先芯が入っている靴はすべて「安全靴」と捉えがちですが、規格があり、試験に合格したものだけが「安全靴」となります。

2.なぜ安全靴の着用が必要なのか

なぜ安全靴の着用が必要なのか

工場や現場で働く人であれば当然のように安全靴を履くよう会社からの指示があり、作業中は着用しています。しかし、何故安全靴を着用する必要があるのか疑問に思ったことはありますか。安全靴を履くことで作業者の足元の安全を守ることはもちろんですが、履く理由としては労働安全衛生規則で決められています。

安全靴の使用義務については、労働者、事業者に対して労働安全衛生規則によって定められており、事業者(会社)は、労働者に対し、労働災害を防止するために、ヘルメットや安全帯などの保護具を支給し、着用させることが義務付けられています。その内、安全靴は足先の怪我や転倒を防止するために着用が指定されています。

労働者に対しては労働安全衛生規則第558条2項に記載があり、事業者に対しては、労働安全衛生規則第558条1項に記載があります。事業者には、使用義務の他にも支給義務についても定められています。

労働安全衛生規則 第558条
事業者は、作業中の労働者に、通路等の構造又は当該作業の状態に応じて、安全靴又はその他の適当な履物を定め、当該履物を使用させなければならない。
2.労働者は、定められた履き物の使用を命じられたときは、当該履き物を使用しなければならない。

規則文から、『事業者は、労働者が行う作業内容が足先に危険が生じる場合や滑りやすい作業であれば、労働者に安全靴を履かせる義務がある』といえます。そのため「重量物を扱う作業や台車などの運搬作業のように、足先に危険が生じる場合・滑りやすい作業時には安全靴を履かなければいけない」といった社内ルールを事業者が決め、労働者にきちんと履かせる事までが義務となり、「労働者は決められた社内ルールを遵守する」という事、が法で定められているということです。

よって事業者が社内ルールを決めて、労働者にきちんとルールを守ってもらうことが重要になってきます。そのため、安全靴を履いて作業をする人は会社のルールを理解し、着用をしていかなければなりません。

3.JIS規格と安全靴

なぜ安全靴の着用が必要なのか

安全靴のJIS規格は耐衝撃、耐圧迫、表底のはく離抵抗の基本性能試験があります。主に、耐衝撃性能によって作業区分ごとに4種類へ分けられています。また甲被(こうひ)の材料で、2種類に分けられます。基本性能試験3項目の他に、耐踏抜き性、耐滑性、耐水性、電気絶縁特性などの付加的性能試験が設けられています。付加的性能試験は水や油などによる転倒のおそれがある現場、釘などを踏み抜く可能性がある現場など、それぞれの項目に応じた作業現場でも安全に作業するために基準が定められています。

【作業区分】

・超重量作業用(U種)

・重作業用(H種)

・普通作業用(S種)

・軽作業用(L種)

【材料区分】

・クラスCⅠ 甲被 革製

・クラスCⅡ 総ゴム製

安全靴の基本性能(JIS規格T8101安全靴)

等級 U種(超重作業用) H種(重作業用) S種(普通作業用) L種(軽作業用)
耐衝撃性能 衝撃エネルギー(J) 200 100 70 30
ストライカ質量(kg) 20±0.2
落下高さ(cm) 102 51 36 36
中底と先進のすき間 サイズによって規定(耐衝撃及び耐圧迫性試験時中底の先芯のすき間を参照)
耐圧迫性能(kN) 15±0.1 15±0.1 10±0.1 4.5±0.04
表底はく離抵抗(N)
※革製のみ
300以上 300以上 300以上 250以上
漏れ防止性能
※総ゴム製及び総高分子製
気泡が連続して出てはならない

耐衝撃及び耐圧迫性試験時中底の先芯のすき間

耐衝撃性能試験は、製品の先しんを含むつま先部を切り取った試料を試験機に装着し、質量20kgのくさび形の鋼製ストライカを種類ごとに指定された高さから自由落下させ、衝撃により変形した先しんと中底とのすきまの寸法を測定し、既定値をみたすかどうかを調べます。

サイズ(足長)
cm
すき間
mm
23以下 12.5以上
23.5~24.5 13.0以上
25.0~25.5 13.5以上
26.0~27.0 14.0以上
27.5~28.5 14.5以上
29.0以上5 15.0以上
なぜ安全靴の着用が必要なのか

引用元:日本安全靴工業会

安全靴の基本性能(JIS規格T8101安全靴)

項目 JIS規格/記号 JIS規格/性能
耐踏抜き性 P くぎ貫通時の力:1,000N以上
かかと部の衝撃エネルギー吸収性 E 吸収エネルギー:20J以上
足甲の保護性(足甲プロテクタ) M (100±2)J衝撃時残存高さ:
25mm以上
耐滑性 F1 区分2…動摩擦係数
0.20以上0.30未満
F2 区分1…動摩擦係数
0.30以上
表底の耐燃料油性 BO 試験用油に浸漬後、
体積変化率が-12%~+12%内
甲被の耐燃料油性 UO 試験用油に浸漬後、
体積変化率が-12%~+12%内
表底の耐高熱接触性 H 表底300℃×1分間加熱で溶融なし、
屈折で亀裂発生ないこと
耐水性 W 浸水試験80分浸水がないこと
耐切創性 C 耐チェーンソー、カットスルーが
生じないこと
電気絶縁特性 I-3500 交流電圧300Vを超え
600V以下の電路用
I-600 交流電圧600Vを超え
3500V以下の電路用
I-7000 交流電圧3500Vを超え
7000V以下の電路用
耐熱伝導性 靴底の高熱伝導性 HI1 区分1…中底温度20度上昇に
20分以上30分未満
HI2 区分2…中底温度20度上昇に
30以上
靴底の低温熱伝導性 CI1 区分1…中底温度10度低下に
20分以上30分未満
CI2 区分2…中底温度10度低下に
30以上

安全靴のカテゴリー表示

PB P1 P2 P3 P4 P5
材料区分 クラス1(革製)
クラス2
(総ゴム・総高分子製)
クラス1(革製) クラス2
(総ゴム・総高分子製)
基本性能(一部抜粋) 耐衝撃性能
耐圧迫性能
表底剥離抵抗
付加的性能 耐踏抜き性(P)
かかと部の衝撃エネルギー
吸収性(E)
表底の耐燃料油(BO)
表底の耐高熱接触性(H)
かかと部の衝撃エネルギー
吸収性(E)

安全靴の形状

安全靴の形状

安全靴の表示一例

例) JIS:T8101 CⅠ/S/P1

JIS T8101規格品、CⅠ:革製、S種:普通作業用、P1 =付加的性能の内 かかと部の衝撃エネルギー吸収性(E) / 表底の耐燃料油性(BO)

試験に合格した安全靴には、合格している試験の記号とJISマークがあります。定められている基準を元に職場で推奨されている規格の安全靴を選ぶことが大切です。

4.JSAA規格と作業靴

JSAA規格と作業靴

安全靴の他にも、つま先を保護するための性能をもった先芯のある靴は多くの種類が販売されています。しかし、その中に安全性能や耐久性に問題のある製品もあります。そこで、JIS規格の安全靴を必要としない作業現場での足元を守る、JSAAの規格認定を受けた靴、「プロテクティブスニーカー」、通称「プロスニーカー」があります。公的試験をクリアし一定の安全性能や耐久性を備えた作業靴の規格として、公益社団法人日本保安用品協会(JSAA)が制定しています。

プロスニーカーのJSAA規格は、普通作業用「A種」(安全靴のS種相当)と軽作業用「B種」(安全靴のL種相当)の作業区分に分かれています。

※A種は安全靴JIS T 8101 S種の試験方法により試験。B種は安全靴JIS T 8101 L種の試験方法により試験が行われます。

プロスニーカーの基本性能

等級 A種(普通作業用) B種(軽作業用)
耐衝撃性能 衝撃エネルギー(J) 70 30
ストライカ質量(kg) 20±0.2
落下高さ(cm) 36 36
中底と先進のすき間 サイズによって規定(耐衝撃及び耐圧迫性試験時中底の先芯のすき間を参照)
耐圧迫性能(kN) 10±0.1 4.5±0.04
表底はく離抵抗(N) 革製・ゴム製 300以上 300以上
人工皮革 200以上 200以上
合成皮革製
編物製
プラスチック製

耐衝撃及び耐圧迫性試験時中底の先芯のすき間

サイズ(足長)
cm
すき間
mm
23以下 12.5以上
23.5~24.5 13.0以上
25.0~25.5 13.5以上
26.0~27.0 14.0以上
27.5~28.5 14.5以上
29.0以上5 15.0以上

付加的性能一覧表

項目 合否判定
耐踏抜き性 くぎ貫通時の力:1,100N以上
かかと部の衝撃エネルギー吸収性 吸収エネルギー:20J以上
耐滑性 動摩擦係数
0.20以上
静電気帯電防止性 23±2℃において
1.0×105≦R≦1.0×108Ω
漏れ防止性 気泡が連続して出てはならない

付加的性能を表すピクトグラム

付加的性能を表すピクトグラム

引用元:日本プロテクティブスニーカー協会

プロスニーカーは甲被の材質が、人工皮革やメッシュ材など自由度があり、多様なデザインがあります。軽量素材を使用した靴底が多く使用されていることから軽作業用として広く活用されています。デザインと安全性能のバランスが良いことが特徴です。外見が一般的なスニーカーとほぼ変わらないため、JIS規格までの安全性を必要としない現場、物流・倉庫・ホテル・レストランなどで広く着用されています。

安全靴やプロスニーカーではなく、その技術を使った、転倒防止対策向けの滑りにくい作業靴や厨房用のコックシューズ、静電気帯電防止機能のあるナースシューズなど、様々な分野にその技術が応用されています。

付加的性能を表すピクトグラム

調理場で働く人

付加的性能を表すピクトグラム

看護師

5.JIS規格とJSAA規格

JIS規格 JSAA規格
決めている団体 日本工業規格 公益社団法人日本保安用品協会
商品名称 安全靴 プロテクティブスニーカー
プロテクティブブーツ
分類
  • 超重作業用(U種)
  • 重作業用(H種)
  • 普通作業用(S種)
  • 軽作業用(L種)
  • 普通作業用(A種)
  • 軽作業用(B種)
甲被素材の
種類
  • 牛革製
  • 総ゴム製
  • 人工皮革製
  • 革製
  • ゴム製
  • 合成皮革製
  • 編物製
  • プラスチック製
特徴 高い耐久性があり、多種多様な職場に対応できる高い安全性を有す JIS規格と比較して、耐久性は劣るが、素材の自由度の高さによる多彩なデザインが可能
使用される環境 ・JIS規格安全靴の着用が指定されている現場
・足先に危険が生じる場合・滑りやすい作業現場など
JIS安全靴程の強度・耐久性は必要とされていない
・ある一定程度の耐久力・強度が必要な現場
・動きやすさを重視する現場など
(JIS安全靴と比較して軽量なため)

JISとJSAAの違いをまとめると、

・JIS規格品は、重作業にも耐えられる規格をもち、安全性に特化している。
・JSAA規格品は、普通作業~軽作業に向けの作業靴。甲被素材に自由度があるため、JIS安全靴と比較し、軽量感がありデザインが豊富。

JSAA規格品はA種B種ともにJIS T8101の試験方法をクリアしているため、JSAA(A種)はJIS(S種)相当品、JSAA(B種)はJIS(L種)相当品と言われています。

6.まとめ

安全靴と呼べる作業靴は、正式にはJIS規格合格品の「安全靴」のみということに驚いた方もいたのではないでしょうか。JIS規格やJSAA規格に合格する作業靴が製造されているため、足元が安全な状態で作業ができるようになっています。一方で規格合格品ではない作業靴もあるため、慎重に靴を選ばなければなりません。安全靴を選ぶ時に表記されている文字やマークの意味を理解することで、危険から自分の足を守る最適な安全靴を選ぶことができます。会社指定の安全靴を履き、ルールを守って、日々安全に作業を行いましょう。

当社オーミヤについて

青銅、黄銅の切削加工を行い、水道配管用継ぎ手を主に製造している東大阪のメーカーです。グループ会社には非鉄金属の総合商社を持ち、そこでは1日2000kgを担ぐ現場があります。その現場から生まれたワーキングサポーター「カタストロングシリーズ」は、担ぐ際の肩の負担を軽減する肩サポーターです。足の安全は、安全靴やプロスニーカー。身体の健康は、働く人のためのワーキングサポーターをおすすめします。私達は働く人のためのモノづくりを通じて、安全な作業に貢献していきます。

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