ホーム > 特集ページ > 高くなった電気代。撤退する新電力の後は、地産地消型電力で電気代節約【高圧編】
毎月支払う水道光熱費。2022年に入ってから特に電気代が高くなったと感じている総務部門・経営部門の方も多いのではないでしょうか。
2016年4月の電力自由化以降、異業種からの参入があり価格が下がった電気料金。中には新電力に切替えたことで基本料金が1/3になった事例も多く見られました。
この新電力会社が2021年以降破綻や事業停止が増加。従来の大手電力会社が新規契約を停止するなど、ビルや工場で使用する高圧電力の電気代は上昇を続けています。
この記事では、新電力会社の現状。日本の電気料金の仕組み。新電力の次の地産地消電力について紹介し、今すぐにできる各会社での電気料金低減のアイデアを紹介していきます。
新電力会社は2022年706社存在し、その内31社が2021-2022年の1年間で破綻、もしくは撤退しました。
新電力は、国内全体の電力販売量の21.6%(2021年12月時点)の電力を販売。5社または5人に1人が新電力から電力を購入しているため、破綻や撤退による影響がでています。
自社で発電設備をもつ新電力会社もありますが、多くは電力市場で電力を購入し右から左に販売するビジネスモデルとなっています。
電力市場での電力調達価格は近年1Kw10円程度で推移していたのが、2021年秋ごろから調達単価が上昇し、2022年3月には1kWあたり27円の調達価格となっています。
2020年には1Kw4円で仕入れることができたため、新電力会社はこの安価な電力を20円台で販売し大きく利益を出していました。
この結果異業種からの新規参入があり、新電力会社は706社まで増加。良くも悪くも利益が出るからと入ってきた玉石混交のマーケットになっていました。この環境下、2022年に入り調達単価が25円を超えると、たちまち「利益が出ない」と新規参入の新電力会社は、撤退・破綻に踏み切っているのが、新電力会社の現状です。
元々、利益が出るといって新規参入したので、利益が出ないとなると判断が早いのも理解はできます。
日本のエネルギー自給率は約11%。またその80%を化石燃料(石炭・石油・天然ガス)を使用する火力発電に頼っています。
化石燃料を使用する火力発電は二酸化炭素を含む温暖化ガスを排出するため、2050年カーボンニュートラル(炭素中立)を目指す日本としては減少させていきたいのが現状。
そのため従来は、二酸化炭素排出0の原子力発電を推し進め2010年には約3割の電力を原子力発電、半分が火力発電という発電バランスにしていました。
しかし2011年の東日本大震災により原子力発電の是非が議論されるようになり2019年、全電力のうち原子力発電は3%にとどまり、火力発電の比率が8割まで上がっています。
カーボンニュートラルを達成したいのに、原子力が動かせない。そこで政府として推し進めているのが太陽光・風力・水力といった再生可能エネルギーです。再生可能エネルギーにより発電された電気はFIT電気といい固定価格買取制度により電気事業者が買い取ることになっています。
このFIT電気を優先的に買い取るため、石炭・LNG・石油の火力発電設備の利用率が下がり発電力が恒常的に減少。
出典:資源エネルギー庁より
再生可能エネルギーは内訳を見るとほとんどが太陽光と水力なので、雨や雪の日、また冬の日照時間が減ると発電量が落ちます。
「FIT電気で足りない電気を、火力発電でまかなう」という現在の日本の発電状況が、昨今の「電力ひっ迫警報」につながっています。
日照時間が長く太陽光発電量が多い夏には「電力ひっ迫警報」が出ず、日照時間が短い冬の1-2月に「電力ひっ迫警報」がでるのは、「FIT電気で足りない電気を、火力発電でまかなう。しかし火力発電設備の発電量が恒常的に減少している。」この日本の発電構造によるものです。
2022年、電気代が上昇している主な原因は「世界的なエネルギーコストの上昇」と「日本が抱える発電の構造」だと言われています。それぞれ詳しく見てみます。
日本の電力でお伝えしたとおり2010年に30%の電力を発電していた原子力は2020年には3%しか発電していないため、結果として火力発電に頼っているのが日本の現状。この火力発電の燃料は
石炭:29.7%
液化天然ガス(LNG):37.6%
石油:1.5%
その他:31.2%
となり、ほとんどの燃料を海外からの輸入に頼っているため、これらの資源価格が高騰すると、電気料金も比例して値上がりしていきます。
太陽光などの再生可能エネルギーにより発電された電気はFIT電気といい電力事業者はこの電力を優先的に買い取ることはすでにお伝えしました。
つまりFIT電気で足りない(そもそも再生可能エネルギーは全発電量の18%しかないので足りないのが前提です)部分を火力発電設備で利用するため、FIT電気が増加すると火力発電の稼働が減少。
再生可能エネルギーは太陽光が多いため日照時間が減少する冬にはどうしても火力発電の割合が増える。一方で発電量は減少しているので供給より需要が多くなり、市場の価格メカニズムから電力価格が上昇する。という構造的な価格上昇要因により2021年以降電力価格が上昇しています。
電力が自由化された2016年は資源価格が安定し電力供給量も十分にあったが、現在では地政学リスクにより資源価格が高騰、また需給バランスが悪くなっている。
再生可能エネルギーだけでなく、原発の再稼働を含めたエネルギー政策を本格的に議論する時代とも言われています。
電気料金のうち、燃料費は経済情勢(為替レートや原油価格)の影響を大きく受けることから、電力会社の経営効率化の成果を明確にするため、燃料費の変動を迅速に電気料金に反映させる制度です。
参考までに2022年1月は1.15円。この金額に使用電力量をかけた金額が毎月の電気料金として請求されます。
「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」=FIT制度は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度。電力会社が買い取る費用の一部を電気利用者から賦課金という形で集め、再生可能エネルギーの導入を支えています。
参考までに2022年は3.45円。2012年以降毎年若干ですが金額が上昇しています。
2012年 | 0.22円/kWh |
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2013年 | 0.35円/kWh |
2014年 | 0.75円/kWh |
2015年 | 1.58円/kWh |
2016年 | 2.25円/kWh |
2017年 | 2.64円/kWh |
2018年 | 2.90円/kWh |
2019年 | 2.95円/kWh |
2020年 | 2.98円/kWh |
2021年 | 3.36円/kWh |
出典:東京電力ホールディングス
「再生可能エネルギー発電促進賦課金単価」
新電力会社が撤退、大手電力会社の新規受付停止などで電気料金を下げる選択肢が少なくなっている今、注目を浴びているのが「地産地消型太陽光発電」です。
新電力会社の多くは発電設備を持たない。そのため電力市場価格が高騰すると電気料金が上がる。
この「新電力会社の多くは発電設備を持たない」を解消するため、自身が所有する工場や事務所、ビルの屋上を電力会社の太陽光パネル設置場所として貸して、その電力会社から電力を購入するという新しい太陽光発電のモデルです。
出典:モデルティ電気(https://www.model-t.co.jp/)
景観の綺麗な場所に突如現れるソーラーパネル群。ソーラーパネルを設置したことによる山崩れなどのニュースもあり、ソーラーパネルに対して悪いイメージを持たれている方は多いのではないでしょうか。
それもそのはず、今のFIT制度は2009年に住宅用太陽光発電のみでスタートし、当初は小規模なソーラーパネルが一般的でした。それが2012年からは10kW以上の産業用太陽光発電の固定買取制度もスタート。
2014年の固定買取価格は1kW32円(10kW以上-50kW未満)と2022年の固定買取価格11円からすると超高単価で10年間の買取契約が可能でした。
そのため、初期投資として1,000万円程度しても、売電で初期投資が回収できるというモデルが主流になり、遊休地に大型の産業用太陽光パネルが設置されることになりました。
この遊休地に大型ソーラーパネルを設置するモデルは2020年に10kW以上-50kW未満の太陽光発電システムは自家消費型という位置づけになり、発電した電気をすべて売電できる全量売電が廃止に。そのため、突然現れるソーラーパネル群の設置は今後考えにくいと考えられています。
再生可能エネルギーの太陽光発電そのもの自体は悪くないのですが、これをビジネスとして、周辺環境などを考えずに開発した事業者がいた結果、全体として太陽光発電に対してネガティブな印象を持つ人が多いのも現状です。
いかがだったでしょうか。
新電力会社の事業停止理由や日本の電気料金が常態的に上昇傾向にある理由をご紹介しました。
あまりにもビジネス=利益に偏重した結果、景観を阻害してまでも設置されたことにより印象が悪くなっている太陽光発電。
この太陽光発電が本来のクリーンエネルギーとして、景観や環境を阻害することなく自社ビルや自社工場の屋根に無償設置され、地産地消型電力として生まれ変わっている現状。
新電力会社の失敗が発電設備を持たずすべてマーケットから購入することによる逆ザヤによる事業停止。。
地産地消型の新電力は、従来の新電力が失敗した大きな原因である「発電設備を持たない」を解消した画期的なビジネスモデルです。
燃料調整費・再エネ賦課金が不要となり電気料金が高騰する中で電気料金を削減する一つの方法としても十分にメリットがあるのではないでしょうか。
2050年のカーボンニュートラル(炭素中立)という観点からも、化石燃料を使用しない電力で事業を運営することで貢献できる、まさにこれからの時代の新電力だと考えられます。
グループ会社に非鉄金属の総合商社を持つ東大阪の金属加工メーカー。
企業理念の「環境に優しい社会の発展に貢献」のため環境に対する記事を公開中。
電力に関しては、電力自由化以降複数の新電力会社を利用し、2022年に新電力の事業停止を受けて法人で使える安価な電力を模索。その中で地産地消型発電を知り導入を決定。ソーラーパネル導入により電力代の抑制と同時にカーボンニュートラルについて中小企業として貢献できることを模索しています。
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