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SDGsの救世主?
環境に優しいバイオプラスチックについて日本一分かりやすく解説!

近年、世界各国で注目されている「持続可能な開発目標」=SDGs
その中でもプラスチック廃棄物が海に漂流し、食物連鎖で人を含め多くの生態系に与える海洋プラスチック問題については身近な問題となっています。

このページでは、注目されつつある自然分解されるプラスチックバイオマスを原料に作られたプラスチックについて幅広く解説していきます。「紙ストロー」や「レジ袋の有料化」の背景など、今企業として取り組めるプラスチックの置き換えについての参考にしてみてください。

目次

  1. 01 バイオプラスチックとは
  2. 02 バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの違い
  3. 03 どうして今バイオプラスチックが注目されているのか?
  4. 04 企業がプラスチック問題に取り組むメリット
  5. 05 バイオプラスチックの課題
  6. 06 まとめ

01 バイオプラスチックとは

バイオプラスチックは、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの総称で、植物由来プラスチックとも呼ばれています。では、バイオプラスチックと呼ばれる2種類のプラスチックについて説明します。

バイオマスプラスチック

石油や天然ガス、石炭のような枯渇性の資源ではない植物などの再生可能な生物由来資源(バイオマス)で作られたプラスチック。
※バイオマスとは、動植物などから生まれた生物資源の総称。具体的には、農林水産物、稲わら、もみ殻、食品廃棄物、家畜排せつ物、木くずなどを指します。

製品例

・レジ袋
・衣類
・パソコンやスマートフォンなどの部品
・自動車の座席シートや部品
・漁業資材
・人工芝

生分解性プラスチック

ある一定の条件下において、バクテリアや菌類の力によって分解され、最終的には水と二酸化炭素に変化するプラスチック。

製品例

・農業、土木資材(マルチフィルム、獣害対策ネットなど)

・袋類(ゴミ袋、レジ袋、エコバッグ)

・容器、カトラリー類

・梱包資材

・その他(樹木葬用の骨壺、サバイバルゲームのBB弾など)

代表的なバイオマスプラスチック、生分解性プラスチック、そしてバイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの両方の性質を持つものは以下の図に示すとおりです。原料、製法、化学構造や機能は様々であるため、それぞれの特徴を正しく理解して目的や解決したい環境問題に応じて適切な用途で使用することが重要です。

02 バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの違い

先ほど紹介した通り、バイオプラスチックには2種類のプラスチックがあり、どちらも「環境にやさしい」というイメージを持たれています。そのため、これら2種類のプラスチックを同一視している人も少なくありません。
しかし、バイオマスプラスチックと生分解性プラスチックには大きな違いがあり、この違いを覚えて正しく使いこなすと、本来の機能を発揮することができます。

この2つの違いは「原料」「機能」です。

バイオマスプラスチックの原料はバイオマス。
生分解性プラスチックの機能は微生物により、水+二酸化炭素に分解されること。

バイオプラスチックにはバイオマスプラスチックと生分解性プラスチックの両方の性質を持つものもあれば、どちらかの性質しか持っていないものもあります。
つまり、バイオマスプラスチックの中には生分解されないものもありますし、すべての生分解性プラスチックの原料がバイオマスとは限らず、化石資源などによって製造されるものもあるということです。

それぞれのメリット

カーボンニュートラル
バイオマスプラスチック

バイオマスプラスチックの原料となるバイオマスはその成長過程において大気中のCO2を固定するという性質を持っています。そのためバイオマスを再生産し続ける限り、バイオマスプラスチックを焼却して排出されるのは、原料であるバイオマスが持っていたCO2なので、大気中の二酸化炭素は増加しないということになります。よって、バイオマスプラスチックは焼却処理する際に排出されるCO2の抑制に寄与することができます。

化石資源の使用削減
バイオマスプラスチック

一般的なプラスチックは石油等の化石資源を原料としますが、バイオマスプラスチックは植物由来資源を原料とするため、生産することができる限り、化石資源のように枯渇する心配は基本的にありません。そのため、化石資源の使用削減に貢献できます。

分解速度が速い
生分解性プラスチック

従来のプラスチックを自然界で分解しようとすると最低でも400年、あるいはそれ以上と途方もない時間がかかります。それに対して、生分解性プラスチックの分解速度は製品規格、気温、微生物の量などの環境によって異なりますが、適切な条件の下、土中にそのまま埋めた場合は約2~5年で分解されてほとんどなくなります。

03 どうして今バイオプラスチックが注目されているのか?

バイオプラスチックが注目を集めている背景にはプラスチック問題が関係しています。従来のプラスチックが引き起こす問題はさまざまですが、ここでは「地球温暖化」「海洋汚染」に着目してみていきましょう。

地球温暖化

日常のあらゆる場面で使われているプラスチック。便利なプラスチックがなぜ地球温暖化に関係するのでしょうか?その理由は、プラスチックの辿る生産・処分・経年劣化というすべての過程で温室効果ガスが排出されているからです。

温室効果ガス

備考

温室効果ガスとは、二酸化炭素(CO₂)や、メタン(CH₄)、亜酸化窒素(N₂O)などのガスを指し、地球の温度を一定に保つ役割を果たしています。もし温室効果ガスがなければ、地球の表面温度は-19度になってしまうと考えられており、私たち人間やその他の生物が生きていくためには不可欠なものです。しかし、近年この温室効果ガスの濃度の高まりによって地球の平均気温が上昇しており、それに伴い気候変動などの問題が発生しています。
ちなみに温室効果ガスの排出量の割合としては、二酸化炭素が70%以上を占めており、次にメタンが約15%、亜酸化窒素が約6%と続きます。

温室効果ガスについて少しわかったところで、話を戻してプラスチックと温室効果ガスの関係性について解説していきます。先ほどもお伝えした通り、プラスチックはすべての過程で温室効果ガスを排出します。詳しく説明すると、「生産」「処分」の段階で二酸化炭素が排出され、「経年劣化」の段階でメタンが排出されます。それでは、この生産・処分と経年劣化の2つに分けて詳しくみていきましょう。

生産するにも、焼却処分するにも排出される二酸化炭素

環境問題について研究しているアメリカの非営利組織CIEL(Center for International Environmental Law)が発表した、プラスチックによる二酸化炭素排出量に関するレポートによると、

生産されたプラスチック樹脂1Mtあたり1.89Mtの二酸化炭素を排出する(1Mt=1トン)

と想定しています。

二酸化炭素1トンは、杉の木71本が1年間に吸収する二酸化炭素量に相当するといわれています。つまり、二酸化炭素が1.89トン排出された場合、全て吸収するには杉の木約150本が必要になります。
では、なぜこのような大量の二酸化炭素が排出されてしまうのでしょうか。それは、プラスチック製品の多くが石油から製造されているからです。これは、資源を大量に消費することに加え、採掘時や輸送時に二酸化炭素を排出することにもつながります。また、製品としての役目を終えてゴミとして燃焼する際、再び二酸化炭素を排出するため、地球温暖化に大きな影響を与えているのです。

経年劣化で排出されるメタンガス

レジ袋やペットボトルなどのプラスチックごみは太陽光や水にさらされ、劣化が進む過程でメタンガスやエチレンガスを発生させます。また、風化などによりプラスチックが細かくなればなるほど、その排出量は多くなってしまいます。ちなみに、メタンは二酸化炭素の25倍もの温室効果を持っている危険なガスとして知られています。そして、さらなる実験により、プラスチックの種類のうち、最も多くメタンとエチレンを排出するのは、レジ袋の原料でもあるポリエチレンであることが判明しています。
このように、プラスチックは製造から廃棄にいたるまで、温室効果ガスを排出し、環境へ大きな負担をかけているのです。

海洋汚染

プラスチックは、海洋汚染の原因でもあります。環境省の発表によると、全国の浜辺で漂着した海洋ごみのうち最も割合の多いのがプラスチックごみで、その割合は60%を超えています。では、海や川にゴミを捨てなければ問題ないのではないでしょうか?実はそれだけではこの問題は解決しません。

やがて海に辿り着くプラスチックゴミ

街から発生したごみが海洋ごみの8割を占めているといわれており、現在、そのプラスチックゴミが海洋に深刻な影響をもたらしています。ゴミ捨て場でカラスなどの動物に荒らされたり、ポイ捨てされたりして、屋外に放置されたプラスチックごみは雨や風により、河川にいきつき、最終的に海に放流されてしまいます。
例えば、あなたが外出先でペットボトルをゴミ箱に捨てようと思いましたが、ゴミ箱はいっぱいです。あなたはどうしますか?もしもごみ箱の横にそっと置いて帰るのであれば、このペットボトルは海洋ごみになる可能性があります。
つまり、どんなに気を付けていてもプラスチックごみは海にたどり着いてしまう可能性があるということです。

マイクロプラスチック

また、残念ながらプラスチックは海に入ってしまうと,分解されるどころか寿命がのびます。水の中では陸上のように熱酸化分解が起こりづらく、深海では光分解も起こりにくいでしょう。しかし、プラスチックは分解されないものの、劣化し小さく微細化されていきます。これがマイクロプラスチックと呼ばれ、生態系のバランスを壊していきます。また、プラスチックに使われる添加物には有害性が指摘されるものもあり、それらはマイクロプラスチックになっても残留します。加えて、プラスチック自体も化学物質を吸着しやすいといった特性があります。このように有害なマイクロプラスチックを取り込んだ魚介類はもちろん、それを食べる私たちにどんな影響が出るのか分かりません。取り込まれたプラスチック自体は排泄されますが、有害化学物質は体内に蓄積される可能性があり、ガンの発生や免疫力低下を引き起こすと考えられています。

魚の量を上回るプラスチックごみ

世界の経済状況や環境問題などについて話し合われるダボス会議2016にて、海洋ゴミに関する報告書が発表されました。報告書によると、世界の海には毎年500mlのペットボトル5,000億本に相当する910トンものプラスチックごみが流出しているようです。そして、このままのペースで増え続ければ、海洋プラスチックごみは2050年には、魚の量を超えるとも予測されています。

04 企業がプラスチック問題に取り組むメリット

まだまだ知られていないことが多いバイオプラスチックですが、企業が導入すれば社会に貢献できるだけでなく、会社をより豊かにできる可能性があります。

社会に選ばれる企業へ

近年、社会的にはESG投資への注目が集まっています。

ESG投資

備考

ESG投資とは、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資のことを指します。ESG評価の高い企業は事業の社会的意義、成長の持続性など優れた企業特性を持つと言えます。

なぜESG投資が増えているのか?

ESGに優れた企業は、これらの問題に取り組姿勢があるため、環境や社会問題、企業の不祥事に対するリスクが低くなります。よって、そのような企業に投資することにより、長期的に安定のある投資リターンを得られる可能性があります。また、環境・社会・ガバナンスを意識した事業や経営を行っている企業に投資することにより、そうした問題を解決する支援をしていることにもなりますので、間接的に社会貢献を行ったことにもなります。

バイオプラスチックを導入することは、脱プラスチックに取り組むこととなるので、環境への配慮がされている企業だと判断され、ESG投資対象の企業として選ばれるのです。そうして投資をしてもらうことで、環境問題を解決することにつながる新たな商品やサービスの開発に力を入れられ、さらに社会に貢献できるいい循環が生まれます。

省力化に貢献

日本では人口減少に伴って、労働力の減少が問題となり、あらゆる場面で省力化が求められています。そこで、生分解性プラスチックの出番です。生分解性プラスチックを使用することで、従来に比べて廃棄物処理の手間やコストを減らすことができる場合があります。

例えば、生分解性プラスチック製の農業用マルチフィルム(畑を覆うプラスチックフィルム)を使用することで、使用後に土壌に漉き込んで土中で分解させることができます。これにより本来なら使用後、不要となったフィルムを回収して処分する必要がありますが、この手間やコストを省くことができます。

05 今後の課題

ここまでバイオプラスチックの魅力や企業が導入するメリットについて紹介してきましたが、まだまだ解決すべき課題もあります。バイオプラスチックを導入する前に具体的にどのような課題があるのかみていきましょう。

コスト

私たちの問題を解決してくれる可能性を秘めたバイオプラスチックですが、従来のプラスチックに比べてコストが1.5~5倍かかるため、なかなか普及が進みません。従来のプラスチックに価格面で追いつくためには、大規模な設備で大量生産を行う必要がありますが、明確な需要が見込めないため、企業は大規模な設備投資に踏み切れずにいるといいます。

食料危機と原材料

バイオマスプラスチックを製造するには植物原料が必要なため、原料不足や原料生産の土地不足となる恐れがあります。たとえば、バイオポリエチレンは、サトウキビから砂糖を作る際に副生する廃糖蜜を原料とするので、砂糖のついでに原料が採れますが、トウモロコシの馬歯種コーンを原料とするポリ乳酸などの場合、バイオマスプラスチック製造のために栽培する必要があります。また、限りある土地で農地を確保するためには、既存の農地を転用するか、森林を切り開いて新規開拓する必要があります。しかし、世界では人口増加に伴う食糧不足が問題視されている現状もあります。農地を転用して食糧不足が加速することを防ぐためにも、植物の非可食部や廃棄物といったバイオマス原料を利用することが求められています。

焼却処理される生分解性プラスチック

生分解性プラスチックは分解には条件があります。例えば、ポリ乳酸(PLA)の分解には60℃以上の温度が必要です。そのため、埋め立て処理をされると分解が進みません。PLAの処理方法の一つにコンポスト処理があります。コンポスト処理は微生物を活用して発酵・分解させるもので、生ごみや下水汚泥などと同様に処理し、土に還します。しかし、これを行うにはPLA樹脂製品とそれ以外の樹脂の製品を確実に選別、もしくは最初から混入しない仕組みを構築する必要があります。普及率が低い今、これらの実施は難しく、残念ながら多くの生分解性プラスチックはその機能を活用した廃棄処理を大規模にはできていないというのが実情です。

※生分解性プラスチックはどんな環境でも分解されるわけではないため、誤って土に埋めたり海に投棄したりすることのないように注意が必要です。

06 まとめ

普及が進まないバイオプラスチックの導入は躊躇してしまうかもしれません。しかし、普及する前だからこそほかの企業より先に進むチャンスです。そして、普及させるには消費者が積極的にバイオプラスチックを手に取ることが必要で、そのためには企業がバイオプラスチックを理解し、その魅力を最大限に発信していくことが大切です。地球温暖化対策やSDGsの実現のために、ビジネスでもプライベートでも、バイオプラスチックをうまく取り入れていきましょう。

当社オーミヤについて

グループ会社に非鉄金属の総合商社を持つ東大阪の金属加工メーカー。2022年に太陽光発電設備の導入。バイオマス原料の新素材の製品開発をスタート。二酸化炭素排出量を減らすモノづくりのため独自の環境規定を設定し、少しでもSDGsに貢献できる取り組みを実施中。導入費用0の太陽光発電の具体例やバイオマス原料でのモノづくりなど。バイオプラスチックでお悩みの際は、当社までお気軽にお問い合わせください。

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